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魚露目8号撮影システムの最適化 ver. 2

2020-02-01更新

魚露目8号はFIT社が製造している魚眼コンバージョンレンズです。 魚露目8号を適当なマスターレンズの前に取り付けて魚眼レンズ化することができます。 通常の魚眼レンズに比べると前玉が小さく、また寄れるため 簡単に虫の眼レンズにできるという噂だったのですが、 実際にやってみるとマスターレンズとの相性があるらしく、 あまりうまくいかないことが多いようです。 私も10年以上前に試してみて収差がひどかったのでそのまま放置していました。 今回マスターレンズとして焦点距離40mmの色消しレンズ1枚を使い 絞りの位置を変えて調べていたところ、 かなり良い結果が得られたので報告したいと思います。

※写真はクリック(またはタップ)すると拡大できます。 もう一度クリックすると戻ります。

上の1枚めはシステム全景(あとストロボ等の照明が付くかもしれません)、 2枚目は実際に撮影したもので、ピント位置をレンズ前2cm、 マスターレンズ側の絞りをF36くらい、 ストロボと影とりを使ってます。 撮影後レタッチソフトで トリミング、960x720pxにリサイズ後、若干アンシャープマスクを掛けました。

バージョン1からの変更点

前回のバージョンの設定では 負の球面収差が強く出ていました。 イメージ中央でのピントを近距離に合わせると 外周部では遠距離にピントがあうという現象です。 状況によってはうまく使える場合もあるかもしれませんが問題もあります。

下の写真の左側がver. 1、右側がver. 2での撮影です。 ver. 1だと外周部では遠距離のところにピントが合っていますね。

設定を見直したところ、 魚露目8号と絞りの間隔を短くすることで負の球面収差を減らせたので ver.2ではこちらを採用することにしました。

要点

  1. A:魚露目8号と絞りの間隔は8mm程度以下にする
  2. 絞りの径は1-2mmぐらい
  3. 魚露目8号の光軸と絞りの中心がずれないようにする
  4. マスターレンズは色消しレンズ1枚で十分。表裏があるので注意。
  5. B:絞りとマスターレンズ間の距離は収差にはあまり影響しないが長いとケラれる。
  6. マスターレンズの焦点距離はFourThirdsセンサーの場合40mm前後。
  7. レンズ端からピント面までの距離と繰り出し量は、無限遠:0mm, 5cm:0.8mm, 2cm:1.6mm, 1.5cm:2.4mm

合成F値

参考にしてください。

マスターレンズのF値は今回のように前に絞りを置く場合、 有効口径は絞りの口径と一致するので 単純に<焦点距離>/<絞りの口径>で求めることができます。 そして魚露目8号のようにマスターレンズの前につけるフロントコンバーターの場合、 合成F値はマスターレンズのF値と変わらないそうです。 つまり今回のシステムでの合成F値は、<合成F値> = <焦点距離>/<絞りの口径>です。 例えばマスターレンズの焦点距離が40mmで、絞りの口径が2mmの場合は 40/2 = F20 となります。

合成焦点距離

参考にしてください。

メーカーサイトによると 魚露目8号の倍率は0.1628倍ということなので、 これをマスターレンズの焦点距離と掛ければ良く、 例えばマスターレンズの焦点距離が40mmの場合は、 合成焦点距離は、 40*0.1628 = 6.52mm となります。

実写例

以下にレンズ前からのピント位置と 絞りをF19,F24,F36と変化させた実写例を示します。

レンズ掃除するの忘れました。ちょっとゴミが多いです。すみません。

ピント位置 無限遠

ピント位置 5cm

ピント位置 2cm

ピント位置 1.5cm

ピント位置 1.2cm

使用した部品や工作方法

主要部品と作り方の一部を紹介しておきますので、 参考にしてください。

Cマウント延長チューブ

AliExpressで中国製の安いのが売っていたのでこれを使いました。 もっと安いところもあったのですが、 今回はいろいろなサイズを扱っていたleila Storeというお店から購入しました。 5mmのやつだと10個で1,200円ぐらいです。

内径は22.5mmほどです。

マスターレンズ

今回使用したのは口径12.5mm、焦点距離40mmのアクロマティックレンズです。 AliExpressに出店しているRuite Optical Lensという会社から購入しました。

口径12.5mm、焦点距離40mmアクロマティックレンズ

表裏でかなり収差が違っているので、 必ず凸レンズ側(コバの狭い方)をカメラ側に向けること (これはレンズの設計によって違うかもしれません)。 かなり絞って使うため、十分な性能がありました(魚露目の収差より少ない)。

1枚目: コバの短い方が凸レンズだと思います。 (これは別のΦ22mmのレンズです) 2枚目: 単体での実写(F13)

実写のオリジナルはこちら。 F13でも十分な性能がありますが、 実際はもう1〜3段ほど絞って使うのでまったく問題なさそうです。

20106011.jpg(3.1MB)

代替品として写真用レンズで使えるものがあると思います。 条件はレンズの絞りを開放にしたとき、 レンズ前に小さな絞りを置いてもケラれなければOKです。 50mm F1.4とかはたぶん大丈夫だと思います(持ってないので試してませんが)。 ただし、ゴーストがひどかったり、 十分寄れないといった問題が出る可能性はあると思います。 所有されている方はとりあえずテストしてみると良いかもしれません。

絞り

杉籐のCマウント絞りを所有していたので使いました。

クリックがあって1目盛りはおよそ絞り1段に対応しているので使いやすいです。 目盛りの0から1の間はリニアで、 0は完全に絞り切ることができます。

測定してみましたよ。 5角形の1辺の長さから面積を得て、 同じ面積の円の直径を求めました。 ※F値はf=40mmのマスターレンズを使用したときの値です。

目盛り 直径 F値(*)
2.5 3.03 F13
2 2.09 F19
1.5 1.69 F24
1 1.11 F36

クリックがない別のも所有していますが、 設定がリニアなので小さい絞りでは設定がほぼ不可能に近いですね。

かなり高価なので、 遮光板に穴を開けた固定絞りで代用できるかと思います。 交換するのはちょっと面倒ですが。

魚露目8号のマウント方法

※バージョン1から変更されてます。

5mmのCマウント延長チューブの 雌ネジの山をリューターで少し削り、 魚露目8号付属のリング(磁石とネジの方)を嵌め込んで接着しました。

白いのはスペーサーです。 内径18mmの塩ビチューブ VE-16 を使用しました。 ちなみにコメリの店舗受け取りだと送料無料です。

レンズキャップ

PVF-16(VE管をつなぐもの)をカットしたものを使いました。 穴はとりあえずビニールテープで埋めてあります。

マスターレンズのマウント方法

厚さ4mmのABS板を丸くくり抜いてレンズを接着したりしていますが、 もっと簡単な方法があると思うので、写真を載せるだけにしておきます。

ヘリコイドとCマウントアダプタ

※M42ヘリコイドを使うように変更しました。

M42ヘリコイドとM42-マイクロフォーサーズアダプタはセットになったものを Amazonから購入しました。

https://www.amazon.co.jp/dp/B071JBFSXN

この商品の説明では12-19mmとなっていますが、 アダプタの長さが含まれておらず実測では17-25mmです。 またアダプタの内側にCマウント雌ネジが切ってあり、 使い方によってはケラれる可能性があると思いますのでご注意ください。

Cマウント-M42アダプタはAliexpressに出店している leila Storeから購入しました (Cマウント延長チューブを購入したところと同じ)。

https://ja.aliexpress.com/item/32874720579.html

フォーサーズ機以外の場合の注意点

マスターレンズの焦点距離をイメージサイズに比例して長くすれば ケラレ具合を同じにすることができます。その場合の注意点ですが、

  • チューブの根本(ボディ側)は太くしないとケラれると思います。
  • ヘリコイド量も比例して増えます。
  • 絞りの大きさについては、 同じ1〜2mmにすれば同じような被写界深度が得られるはずです(たぶん…)。

作例

大きな虫が見つけられないので、 とりあえず咲き始めたマンサクの花を置いておきます。 またそのうち追記したいと思います。

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