コナジラミの標本作成方法 ▶浸軟

軟化 maceration

水酸化カリウム(KOH)溶液に浸けて、(1)内容物の溶解と(2)外皮の軟化を行う。 処理時間が不足すると内容物が溶けないし、 やりすぎると外皮が傷んでくる。 内容物が溶ける前に外皮が痛むようだとどうにもならない。 私は現在軟化と脱ロウをセットで2回行っている。 こうすると内容物の溶解が短時間で済むため、 2回め外皮が軟化するまで漬けておけばよい。 1回で処理できる場合もあるかもしれないので、 大量に処理するならばその条件を探ってみるとよいかもしれない。

  1. 丸底ドラムに移動。一度に20個体ぐらいはできると思う。
  2. 排液
  3. 10%水酸化カリウムを0.5〜1mlほど加える
  4. 蓋をして40°Cで30分〜12時間ぐらい静置
  5. KOHを排液
  6. 精製水を加える
  7. 蓋をして40°Cで10分から30分ぐらい静置する

下の動画は2倍速で、静置部分はカットしてある。 設定温度が53°Cになっているが、 丸底ドラムの液体の温度は40°Cぐらいまでしか上がらない。

▼1回目の軟化処理。左が開始時で右が40°C2時間後の状態。

注意点

  1. 丸まってしまう場合、軟弱個体の方法(1%KOH常温)に切り替える。
  2. パンクしてしまう場合、濃度を少しずつ変える
  3. 脱色してしまう... 2回やる方法にしてからは起きてない
  4. 透化が完全であっても、外皮が硬すぎると カバーガラスをかけても潰れてくれないので十分軟化する必要がある
  5. 長時間やりすぎると検鏡に必要な組織まで破壊されてしまう

軟弱個体

これでもうまくいかないことがある。再調査中

黒い軟弱個体を通常の方法で処理すると 検体が丸まってしまい失敗することがある。

丸まった軟弱個体(左側)

丸まった軟弱個体(左側)

この場合は1% KOHを使い常温で処理する。 かなり時間がかかる(12時間?)。 脱色されないので進行具合がまったくわからないので 先に漂白した方がよいかもしれない。 先に漂白する場合は加熱処理を行わないと、 弾かれるためかうまくいかない。

パンク

パンクすると検鏡時に見づらくなるのでそうならないようにしたい。 大量の脂肪を蓄えていて腹面側の表皮が弱い個体はパンクしやすい。 水を加えたときに浸透圧で水が取り込まれ 脂肪の塊を押し出そうとしてパンクするように思われる。 このような場合は少しずつ濃度を変えていくと良い。 2回目の軟化では通常の方法で大丈夫。

パンク例

パンク例

考察

Brown2006からの引用

Maceration of body contents is carried out by warming to around 80°C in a 10 % Potassium Hydroxide solution (an alkali) for 5-10 minutes or longer, until visible contents have become translucent. A small puncture may be made in the ventral surface of each specimen in order to speed up this and subsequent processes, and to help prevent osmotic collapse.

温度はかなり広い範囲で可能なようがだ、 高温になると急速に処理時間が短くなるので注意する。 常温でもできるよう書かれた文献もあるが、 ものによっては3日以上掛かるかもしれない()。  穴を開けることはあまり効果がないので私は現在やってない。

軟化容器

文献では磁器製のるつぼ試験管等があげられている。 その他ポリスチレン容器を使っておられる方もいるようだ。 私は現在丸底ドラムというポリプロピレン製の容器を使っているが、 [染色皿](たぶんソーダガラス製)が使えそうなら乗り換えるかも知れない。

課題