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コナジラミの標本作成方法
Ver. 2018-08-19

コナジラミのスライド標本(永久プレパラート)を作る方法について。

コナジラミはカメムシ目コナジラミ上科の昆虫の総称である。 コナジラミの同定は蛹殻(4齢幼虫の殻)を スライド標本(プレパラート標本) にして生物顕微鏡で検鏡することによって行う。 コナジラミの永久プレパラートは マウントメディアとしてカナダバルサムが使用される。 方法はおおむねBrown2006(Martin1999を修正したもの)をベースにしているが、 そのままではうまくいかないケースがあるし、 使用する薬品を減らしたかったので少し改変している。 若齢幼虫や成虫も同様にスライド標本にされるが まだチャレンジしていないのでここでは触れない。 また簡易検鏡についてもチャレンジしていないのでここでは触れない。

なお私は専門家ではないし、 標本の作り方を体系的に学んだわけでもなく、 主にネットで得られる情報を勉強している。 基本的な操作がわかっていなかったりするので、 あくまで参考程度にご覧頂きたい。

※なにかお気づきの点があればご指導いただけると幸いです。

Brown2006と大きく異なっている点

ページ索引

薬品類機材薬品容器作業容器ピペット類マイクロツールスライド関連用具その他の用具移動排液採集剥離加熱処理軟化(KOH処理)、 脱ロウ(脱脂含む)、 中和ゴミ取り漂白染色脱水マウント乾燥ラベリング

薬品

水酸化カリウムキシレン氷酢酸無水エタノール70%エタノール精製水オキシドール(3%過酸化水素水)、 10%アンモニア水酸性フクシンクローブオイルカナダバルサム

基本テクニック

移動排液

手順概説

  1. 基本手順
  2. 黒い軟弱個体(丸まってしまう)

基本手順

通常の検体、脂肪の多い検体の場合での処理方法。 軟化と脱ロウは1回で済む場合もあるかもしれないので、 もし大量に処理するならばその条件を探しても良いと思う。

  1. 採集: 葉っぱごと切り取ってビニール袋などに入れて持ち帰る。
  2. 剥離: コナジラミの蛹殻を葉っぱから剥がす。 すぐに処理しない場合は、 70%エタノールで満たしたマイクロチューブなどに入れて保存する。
  3. 軟化(1): KOHに浸けて内容物を溶かす。また外皮を柔らかくする。
  4. 脱ロウ(1): 中の脂肪を溶かし出し、外側のロウ物質を溶かす。
  5. 軟化(2): もう一度KOH処理する。
  6. 脱ロウ(2): また油脂が出るのでもう一度行う。
  7. 必要なら染色または漂白
  8. [成虫を取り除く] (試行錯誤中)
  9. ゴミ取り
  10. 脱水: 氷酢酸により水分を取り除きクローブオイルに漬ける。
  11. マウント: スライドガラスに移動しカナダバルサムで封入する。
  12. 乾燥: 50°Cで1週間ほど乾燥させる。
  13. ラベリング: 採集ラベルと同定ラベルを貼る。

黒い軟弱個体の場

現在試行錯誤中

黒い軟弱個体はKOH処理中に丸まってしまいどうにもならない。 以下のようにしてうまくいった場合があったのだけど ダメなケースに遭遇して試行錯誤していたが 丸まってしまう検体が底をついたので中断。

軟化の前に加熱処理漂白を行う。 軟化は1%KOHを使い常温(20°C)で処理。

参考文献

Brown2006

Brown, P. A. & De Boise, E. (2006). Procedures For The Preparation Of Whole Insects As Permanent Microscope Slides And For The Remounting Of Deteriorating Aphid Slides. NatSCA News, Issue 8, 15 ‐ 19. OpenAccess ―コナジラミの標本の作り方。 Martin1999の方法が載ってる。(Martin1999は未読)

Carter1999

Carter, David & Walker, Annette K. (1999) Care & Conservation of Natural History Collections. Butterworth Heinemann, Oxford. Pp 226. OpenAccess ―標本の保存方法とかが載ってる。ほとんど見てない。

Dooley2002

Dooley, J. (2002) Specimen Preparation. PDF − 小道具等が少し載っている。

EPPO2004

EPPO (2004) Bemisia Tabaci. Bulletin OEPP/EPPO Bulletin 34, 281–288. OpenAccess ―タバココナジラミに関する文献だけど 付録にMartin1987を改変したコナジラミの標本作成方法が載っており これを参考にした。 (Martin1987は未読)。 EPPOはヨーロッパの植物防疫機関のようだが詳しくは知らない。 著者名は載ってなかった。

Henderson2011

Henderson, R. C. (2011) Diaspididae (Insecta: Hemiptera: Coccoidea). Fauna of New Zealand 66, 17-18 OpenAccess ―カイガラムシのプレパラート標本の作り方が載ってる

Martin1999

Martin, J. H. (1999) The Whitefly Fauna of Australia (Sternorrhyncha: Aleyrodidae). A Taxonomic account and identification guide. Natural History Museum/CSIRO Entomology, Canberra Technical Paper No. 38. ―(未読)

Miyazaki1987

宮崎昌久 (1987) アブラムシのプレパラート作製法. 植物防疫, 41, 170-173.

Neuhaus2017

Neuhaus, B. & Schmid, T. & Riedel, J. (2017) Collection management and study of microscope slides: Storage, profiling, deterioration, restoration procedures, and general recommendations. Zootaxa, 4322(1), 1 - 173. OpenAccess ―スライド用具のまとめ。

Sirisena2013

Sirisena, U.G.A.I. & Watson, G.W. & Hemachandra, K.S. & Wijayagunasekara, H.N.P. (2013) Preparation of Hemiptera: Sternorrhyncha for identification. Tropical Agricultural Research, 24, 2, 139 - 149 OpenAccess − あまり見ていないのだが、 比較的最近出たもので文献のリストを得るのに役立つかと思ったので載せておく。

Takagi1970

高木貞夫 (1970) 小型昆虫の新しいプレパラート標本の作り方. 植物防疫, 24, 393-396.

Tanaka1967

田中正 (1967) アブラムシの採集と標本作製法. 植物防疫, 21, 373-378.

Torikura1996

鳥倉英徳 (1996) アブラムシのプレパラート簡易作製法(Martin 法). Rostria, 45, 7- 10.

Toyoshima2013

Shingo Toyoshima, Hidenari Kishimoto & Hiroshi Amano (2013) カブリダニのプレパラート標本の作り方 WEB − ダニの例ですが動画が見れる。

Yamagishi2006

山岸健三 (2006) 昆虫採集と標本整理 PDF